世界禁煙デー

 

第19回世界禁煙デー・宮城フォーラム

 

シンポジウム


タバコで起こる意外な病気―精神科の立場から―


石井 一 氏

静山会医療・福祉グループ あおばの杜診療所
   禁煙みやぎ 会員


 

 精神科の立場からタバコを論ずると、結局ニコチンはコカインやアルコール同様、依存性物質である、ということにつきます。禁煙の試みが失敗するのも多くはこの依存性の故であって、意志が弱いとか、覚悟が足りないとかいった問題ではありません。しかし喫煙者の全員がニコチン依存の状態にあるわけではなく、非依存者では割合容易に禁煙が成立するので、依存者の禁煙の失敗はとかくネガティヴな目で見られがちで、禁煙希望者が治療から遠ざかる一因ともなっています。アルコールの場合と同様、タバコの場合も依存という病態の理解が必要です。
 依存とは、一口に言えば、生存に必須ではない物質の使用・摂取を自らの意志でコントロールできなくなった状態のことです。いったんニコチン依存に陥ると、「タバコ病」の恐ろしさを知りながらも禁煙できなくなります。種々の禁煙治療がまずこの依存状態を解消することをターゲットとしている所以です。タバコでもアルコールと同様、3か月を依存から脱する節目と考えています。
 一方で、うつ病や統合失調症といった精神疾患の患者さんの症状悪化時に、いったん止めていた喫煙を再開したり、吸っている本数が増加したりすることがしばしば見られます。ニコチンを中枢神経に作用する薬物として見ると、少量で刺激、大量で鎮静効果があるとされるので、状態に応じて半ば無意識にニコチンを摂取していると考えることもできますが、せっかく我慢しているのにもったいないことです。病状が回復すればまた元の状態に戻るので、これを逆手にとって、最近では一部の抗うつ剤の使用が禁煙治療に試みられています。同じように、夜間不眠の方が、間が持たずに起き出して喫煙するのもよくある光景ですが、喫煙という行為自体や、ニコチンの摂取でかえって覚醒レベルが上がるので全くの逆効果です。
 また、ひところニコチンが中枢神経を刺激するので喫煙者はアルツハイマー型認知症になりにくいという説が出ましたが、現在では顧みられなくなったようです。喫煙で動脈硬化が進行すれば当然脳循環も悪くなり、認知症予備群になる可能性が高まります。

 

■『タバコと精神科』スライド原稿

https://docs.google.com/presentation/d/1jv-mCdScez5FQxrQnflUP6wJtMYnHe-dgAISz9fzVqs/edit?usp=sharing

 

 

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