世界禁煙デー

 

第19回世界禁煙デー・宮城フォーラム

 

基調講演


タバコを吸うと何が起こるのか

黒澤 一 氏
東北大学環境・安全推進センター
東北大学大学院医学系研究科
産業医学分野 統括産業医・教授
禁煙みやぎ会員

 


 タバコを吸うとは、タバコを燃焼させた際のガスや煙を吸い込むことです。タバコに火がついて発生するガスや煙には、多くの有毒化学物質が含まれています。それらは、口や喉の粘膜や、気管や気管支などの上皮など、体内の通過経路のそこらじゅうに溶けたり、へばりついたりして害をおよぼすのです。そして有害成分は血中にも移行して、体のいろいろなところに影響します。
煙に含まれるニコチンは、血中に移行して、数秒で脳に到達し、麻薬のような効き方をして、薬物中毒を起こします。生まれて初めてタバコを吸った場合、不快感こそあれ、ストレスが開放されたような実感はないでしょう。タバコでストレスが解消されるような感覚は、ニコチン依存症が成立している場合だけなのです。ニコチン依存者は、常にニコチン切れのストレスに曝されています。タバコを吸うとニコチンが供給され、その時だけストレスが緩和されます。脳波で見てみると、その時だけ、非喫煙者の平均に戻れることがわかっています。ニコチンの血中濃度はすぐに下がるため、一日に何回もタバコを吸う、典型的な習慣喫煙者の状態となるわけです。では、どうしたらよいでしょうか?ニコチン供給をやめれば、つまり、タバコを一切吸わなければ、脳波は1週間とか2週間で、自然に元に戻ることがわかっています。この間、禁断症状があるため、禁煙が難しいという理由になっているのは承知の通りです。
この他、タバコは、不要な自律神経作用を起こしたり、動脈硬化やうつ病、種々のガンなど、多種多様の病気に関係します。喫煙者でも長寿の方はいらっしゃいますが、総じて短命であり、平均で10年も寿命が短くなることがわかっています。喫煙者はタバコの購入で多額の税金を納めていると主張するかもしれません。しかし、タバコの健康被害等を中心にした国家レベルの損失は数兆円のレベルで税金を超えており、喫煙は経済的にも大きなマイナスで国民に
迷惑をかけていることになります。
また、タバコの煙は自分だけが吸うのではありません。タバコから立ち上る煙、タバコを吸った人がはく煙は周囲の環境を汚しています。受動喫煙や3次受動喫煙は、タバコを吸わなくても被害を受けることをさしており、想像以上のひどさです。これらを防ぐには、環境を完全に禁煙することが一番です。家庭、職場、そして学校や病院などの公共施設、飲食店や娯楽施設など、すべての人の健康を思い、完全禁煙を進めていきましょう。

 

 

■『タバコを吸うと何が起こるのか?』スライド原稿

https://docs.google.com/presentation/d/
1_UxrCDce7GZT5IwS3BZIKO_N2rCb8dzhvYUG07o4Fns/edit?usp=sharing

 

 

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